YouTubeの収益化が停止され、心がポキリと折れてしまった私。あれほど夢中になっていた動画制作を一度ピタリと止め、暗闇の中で立ち止まっていました。
「もう、私のやってきたことには意味がなかったのかな……」
そんな失意のどん底にいたとき、私はふと、これまで自分のチャンネルに寄せられていた視聴者の皆さんからの「コメント」を、もう一度最初から読み返してみることにしたのです。
「多くはない。けれど間違いなく、私のファンがそこにいた」
画面をスクロールしていくと、そこには温かい言葉が並んでいました。
「このチャンネルが大好きで、いつも楽しみにしています」という女性の方からのメッセージ。 「すごく勉強になります! 知りませんでした」という、たくさんの絵文字で飾られた熱い感想。
それは、決して何万件もあるような膨大な数ではありません。でも、私の動画を見て、心を揺さぶられた人たちがそこにいたのです。数は多くなくても、私のチャンネルには、間違いなく「深いファン」がついてくれている、と確信した瞬間でした。
「この人たちが待ってくれている限り、私はここで諦めてはいけない。もう一度、新しい形で動画を届けなくてはならない」
再び静かな火が灯りました。
「取り柄のない、震える声」で勝負する覚悟
AI審査に「誰でも作れる量産型」と言させないためには、どうすればいいのか。 出した答えは明確でした。動画のどこかに、絶対に代えが効かない「人間性(自分らしさ)」を入れ込むことです。
とはいえ、顔を出すのはさすがにハードルが高すぎる。それなら、この「声」を使おうと考えました。
しかし、私は自分の声に全く自信がありません。 これまでの人生で、声を張って喋り慣れていないせいか、いざ喋ろうとすると声が震えてしまうのです。生まれてから一度も、お腹から声を出したことなんてありません。 人から「通る声だね」とか「大きい声だね」なんて褒められたことも一度もなく、ただ小さくて、ボソボソして、ゆっくり喋るだけの、本当に何の取り柄もない声。さらに鼻声で、時にはちょっとどもってしまうことすらあります。
コンプレックスだらけの声。それでも、「声だけでも入れよう」と心に決めました。
家電量販店でのプチ洗礼。「こんなおばちゃんが、何に使うの?」
「よし、声を録ろう」と決めてからの2〜3日は、どうすればいいか自宅でうだうだと考え込んでいました。しかし、考えてばかりいても始まらないと、私は思い切って近くの大きな電気屋さんへと向かいマイクを買いに行きました。
広い店内のオーディオコーナーを探しても、youtube用マイクは見当たりません。近くにいた店員さんに声をかけてみました。
「あの……YouTubeの動画とかで、声を拾うマイクってありますか?」
すると、その店員さんは「あー、そういうのですね……」と言って、少し意外そうな顔で私に視線を向けました。 その瞬間、私の頭の中にひとつの妄想(?)が駆け巡ります。
(こんなおばちゃんが、一体何にマイクなんて使うんだろう……?って思ってる?)
店員さんが本当にそう思ったのかは分かりません。私の被害妄想、行き過ぎた想像だったのかもしれません。でも、動画配信とは無縁そうに見える私のような主婦世代が「YouTubeのマイク」と口にしたときの、あの空気感。新しい世界へ一歩踏み出そうとする私にとっては、ちょっぴり勇気のいる瞬間でした。
結局、その街の家電量販店には、私が求めているような胸元につけるピンマイクや本格的な配信マイクは全然置いていませんでした。
「そうか、こういうマイクをわざわざ買い求める人なんて、世間一般にはほとんどいないんだ。私はそれだけ、特別な挑戦をしようとしているんだな」
ネットで見つけた、1万円の相棒
店舗での購入を諦めた私は、ネットへ舞台を移し、楽天やAmazonで必死にマイクを探し始めました。ネットの世界には、あんなに店舗になかったマイクが、それこそ数え切れないほど溢れていました。
機械のことはよく分かりませんでしたが、「私の自信のない声を、少しでもいい声で拾ってほしい」という一心で、私にとっては決して安くない、1万円台のマイクを探し当てました。
この1万円のマイクが、私の新しい相棒。 私の声を吹き込んだ、完全な「世界にひとつだけの動画」作りの第二章が、ここから幕を開けるのです。
(第8話へ続く)
これはCTAサンプルです。
内容を編集するか削除してください。
